0040 木質バイオマスで発電!グリーン・エネルギー研究所vol.2
先週に引き続き、高知県宿毛市で発電事業を開始した相愛のグループ企業グリーン・エネルギー研究所の事業内容をじ~っくりとご紹介します。
こちらが、グリーン・エネルギー研究所のシンボル・ボイラー棟。
■木材の調達について
-発電にもペレットの生産にも大量の木材が必要ではないかと思います。
だいたいどれくらいの量が必要になるのですか?
永野:6500kWで320日(年間稼働予定)出力し続けるには、約9万トンの木質バイオマスが必要になります。
-膨大な量に聞こえるのですが、それだけの量を毎年調達し続けられるのでしょうか?
永野:全然余裕です。日本はフィンランド、スウェーデンに続いて森林率第3位。
世界有数の木質バイオマス資源保有国といって過言ではありません。
戦後植林された樹木が成長してきていますので、これからは間伐、助伐のみならず主伐が盛んになります。木の再生産性はまったく問題がないのです。
問題は木を切り出して運ぶ仕組みや、マンパワー不足等の部分です。
これも、木材の資源化が進むことで整備されていくと考えられます。
-具体的な調達先は?
永野:いくつかの調達先があります。まず
①山からの直接調達
山主様に伐採を依頼された林業業者様から、用材に使えない部分の木や枝葉等これまで林地残材となっていたものを買い取ります。
②運送業者様からの調達
いろいろな伐採現場を回って、林地残材を集めて販売されている運送業者様がいらっしゃいます。彼らは運送のプロ。効率的に大量の木を納入してくれています。
③原木市場からの調達
原木市場にはたくさんの木が集まってきます。その中から用材にならない部分の木を買い取っています。同様に売り物にならない樹皮なども大量に出ますので、集めて買い取っています。
④チップ製造業者様からの調達
これまでは製紙会社への販売しかなかったのですが、うちも売り先の一つとなるので、ご協力いただける分から徐々に入れてもらっています。
⑤製材業者様からの調達
丸太から角材をカットした残りの部分・背板や、端材、チップなど、
商品にならないを買い取っています。
さらに、庭や畑の剪定枝。
一般家庭で剪定された枝葉や、果樹栽培で切り落とされた剪定枝なども買い取ります。
こちらは昨年12月に新聞折込チラシで告知させていただき、1月後半くらいからボツボツと問い合わせ、実際の買取が始まっています。
2月に入ってからは、どんどん数が増えていますね。
-この短期間でよく集まりましたね。
永野:そうですね。どの業者様にもメリットになるよう買取価格設定を考えました。
もうひとつは、我々の理念に共鳴していただいた業者様が何社かあり、各方面にお声がけ頂いた事でお付き合いの幅が増えました。とても感謝しています。
建築用材木として使用できないバラエティー豊かな木。
丸太から角材をカットした残りの部分・背板の山。
これまで廃棄されていた枝葉も貴重な燃料資源。
木材を詰んだトラックがひっきりなしに出入りします。
敷地内に積まれた様々な木材を燃料としてフル活用。
-木材の買取には証明書が必要だと聞いていますが。
永野:FIT(※)では、発電に使われる木質バイオマスがどういう木であるのか、伐採の目的や出処等によって売電価格が変わってきます。
大まかには
間伐など由来の木質バイオマスが32円/kWh
一般木質バイオマスが24円/kWh
一般廃棄物その他のバイオマスが17円/kWh
建設資材廃棄物が13円/kWh
となっていて、それぞれの証明が取れなければ、一番下の13円の売電価格になります。
なるべく高い価格で木材を買い取るためには、証明書が必要になるのです。
ただ、一般個人や農家の方などは、業界団体に所属していないケースが多いので、証明が取りづらいのが現状。
このたび宿毛市を含む幡多6市町村および愛媛県愛南町にお願いし、証明代行を行ってもらえることになりました。
これで幡多6市町村および愛媛県愛南町にお住まいの方は、各市町村で証明代行を行っていただけます。
個人の方で、庭木の剪定枝などを売りたいとお考えの方は、まず、お電話でご相談いただければと思います。
専門の担当者をつけていますのでお気軽にどうぞ。
※FIT(Feed In Tarrif):再生可能エネルギー固定価格買取制度。
こちらが、間伐など由来の木質バイオマス(通称:未利用材)の山。
こちらが、一般木質バイオマス。木材の有効活用を目的とした制度のため、同じ木でも出処によって価格が違ってきます。
■これからの展望
-さきほどご苦労されて点をお伺いしましたが、逆に喜びは?
永野:苦労9割、喜び1割という感じですが、その1割が何物にも変えられません。
一番印象に残っているのは、フル稼働の6500kWに到達した時です。出張で高松道を走っている時でした、和田副所長から携帯に電話が入り、「6500kWまもなくいきますよ」と。
震えました。その時車窓を流れる風景が今でも忘れられません。
もう一つは竣工式当日、お客様に大勢来ていただきバタバタしている時でした。
以前から何度も足を運び、木の調達をお願いしている業者の社長さんから携帯に電話が入りました。「いろいろ検討したけど、決めた。お宅に出すよ」と。
この時もスタッフみんなで盛り上がって、早々に飲み会を企画。
弾けましたね。こういう瞬間をもっともっと体験していきたいと思います。
奥が蒸気タービン、手前が発電機。木質バイオマスを燃やして得た高圧の蒸気でタービンを回して発電します。
様々な配管が這う発電タービン室内部。
24時間体制で、様々な機器を監視し続けるスタッフ。
その他、建物外部に設置された機器も定時チェックが必要。
チェックポイントは百箇所以上にのぼります。
1月27日に開催された竣工式の様子。高知県、地元、林業関係者等約120名の皆様にご出席いただきました。
-9割の苦労があってこその喜びですね。
では、これからの展望をお聞かせください。
永野:はい、まず木の調達に関してですが、現在は今もう育っているものの活用が主になっています。今後のことを考えると、新たに植えて育てた木を資源とした活用するような仕組みづくりを行っていきたいと考えています。
山にはそれぞれの特性があるので、どこもかしこも材木用の杉ヒノキでなく、適したところには燃料用として雑木を植え、例えば20年サイクルで伐採して資源として回していく等、いろいろなやり方が検討できます。
-順調に回れば山の仕事も増えそうですね。
永野:そう、それこそが目標です。地域の方と話していてわかるのですが、今でも林業をやりたいと思っている方は、若者も含め結構いらっしゃるんですよ。
ただ現状は需要が落ち込んで、景気の悪い話しかありません。
グリーン・エネルギー研究所の事業が、木材の需要を押し上げる核となることがひとつの目標です。林業で安定収入が稼げるどころか金儲けにもなる、そういう所まで、持っていきたいと思っています。
うちの炉も、現状は燃えやすいチップなどを混ぜないと十分に燃焼しない面があるのですが、性能を上げて本当の林地残材だけで発電できるようにしたいと考えています。林地残材の出し先がさらに増えると、山の仕事も増え、活気が出る、若い林業家も増える。
おまけに電力は地産で賄える。これを目指しています。
2016年からは、一般家庭でも電力供給会社を自由に選べる「電力自由化」が行われます。2020年には発送電の分離も予定されています。
やはり、この地域の方たちには、遠くから輸入した化石燃料で発電した電気ではなく、「地元の木で発電した電気を使いたい」と言っていただけるようにしたいですね。
まだまだやることは山積していますが、あせらず、じっくりと取り組んで行きたいと思います。
敷地近くの高圧送電線に、発電した電気が送電されていきます。
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いかがでしたか、グリーン・エネルギー研究所の取り組み。
地域の木を発電のエネルギーやペレット燃料に変えることで、これまで輸入化石燃料に支払っていたコストが地元に落ち、山の仕事が増えることで雇用も増え、地域が活性化し、山の環境保全も実現できる。まさに一石何鳥にもなる試みではないでしょうか。
いままさに、活動を始めたグリーン・エネルギー研究所。
その今後にぜひご注目ください。ここに灯った火を絶やさぬよう、持続可能な炎となって地域を明るく照らし続けられるよう、皆様応援のほど、何卒よろしくお願いいたします。
永野正朗取締役。
「これからも皆様にご指導いただき、地域に役立つ発電所として頑張っていきたいと思います」。
最後に今一度別アングルで、ボイラー棟。重厚です。
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