0032 仁淀川低水流量観測業務

2014.10.17

カテゴリー: 活動報告

熱心な相愛ホームページおよびフェイスブック視聴者の皆様はもうすでにご存じかと思われますが、相愛は平成25年度仁淀川下流流量観測業務において、国土交通行政関係功労者事務所長表彰・優秀貢献業務に選ばれました。

 

これも一重に、皆々様のご声援のおかげと社員一同張り切って今年度も流量観測業務に励んでおります。

 

当ブログでは昨年、台風17号襲来時に行った仁淀川高水流量観測業務をご紹介させていただきましたが、今回ご紹介するのは、普段の穏やかな川の流れを測定する低水流量観測業務。

 

たまたまこの時期インターンシップで来ていた2名の若者たちとともに、張り切って行ってまいりました。

仁淀川橋のたもと、測定を行うラインにワイヤーを張る面々。

この日の仁淀川、凪いでおります。

ちなみに、去年の高水流観時の仁淀川。上の写真の地点はすでに水没してます。おっかなかったです。

 

高水流観の時は浮子を投入して、2地点間を流れる早さから流速を計測していましたが、低水の場合は、ボートに乗ってダイレクトに流速計を投入して流速を測定します。

ボートがやってきました。

ワイヤーをつかみボートを固定する人間(前)、スタッフで水深、流速計で流速を計る人間(中央)周囲の安全確認を行い、測定結果を無線で伝える人間(後ろ)の3名体制で、大河にこぎ出し測定を行います。

 

ここで少し解説を入れますと、流量とは川を流れる水の量ですので、任意の地点の断面積を測り、その地点の流れの速さを測定して計算し、割り出していきます。

流れは秒速で測るので、「その断面を1秒間に通過している水の量(㎥/s)」という意味合いになります。

その任意の断面が、右岸から左岸まで川の流れに直角にひかれたこのワイヤーの地点になります。

仁淀川橋たもとのこの地点は川幅が約190mありますので、川の深さは10mごと、流速は20mごとに測ります。

専門的にはそれぞれ水深測線、流速測線と呼ばれています。

まずは水位の確認。量水板を確認します。この日は1m28㎝でした。

 

水位というのは、水深とはまた違いまして、任意の基準点からの高さの事。

流量のもとになる水深や流速は365日計り続けることはできないので、必要なときは、いつでも確認できる水位から流速を割り出します。

流量観測業務はその基礎データ作りのために行っています。

最終的にまとめられる流量曲線。縦軸が水位、横軸が流量。

その日の結果(流量)が一つのポイントとなります。この地点では可能な限りひと月に3回の測定を行い、ポイントを加えていきます。

高水流観も含め加えたポイントをつないだ曲線が水位から流量を割り出すための基礎データとなります。

 

いざ、本日第1本目の測定スタート!

10mごとにスタッフで水深を測り。

次の10mで水深と流速を測ります。

流速は、水深75㎝以下なら水面から60%の地点。それより深い場合は水面から20%と80%の地点で測り、平均を出します。

狭いボート上での作業。機器の受け渡しもコンビネーション良く。

インターンの小笠君に測定を体験してもらいました。

「腕がプルプルしてきました」。

 

一見単純そうですが、川は流れていますので計器を持つ腕には相応の負担がかかります。

流速測定を正確に行うためには、計器を流れに正対させ、川底に向かって直角の位置を20秒以上保つ必要があります。

 

川幅190m以上ですから、水深測定20回+流速測定10回の計30回の上げ下ろし。流れの速い地点では、さらにきつい作業になります。

おなじみ水文調査担当・藤岡。

周囲の安全確認を行いつつ、下の計器に表示された流速を隊長に無線連絡します。

年の功で、肉体的には楽なパート。

右岸側、告知の旗を立て、隊長他2名のスタッフが警備にあたります。

左岸側でも告知の旗を立て、2名のスタッフが警備にあたります。

 

相愛で流量観測業務を行う際に特に気を使っているのが安全対策。

川はみんなの共有スペースとして、川漁師の方からレジャー利用の方まで幅広く活用されています。

 

本業務は川にワイヤーを張っての測定作業となるため、上下の往来には十分な注意が必要となります。

 

この日も、上流で支度をしていた川漁師の方に声をかけ、上下流のどちら方向に向かうのか確認を行いました。

もちろん、通行の妨げになる場合は、ワイヤーを下して安全確保。

人出の多い夏場は、細心の注意を払って安全警備にあたっています。

最後にゴミ拾いをして、第1の観測現場終了。

河川環境の美化、また自分たちのケガ防止等の目的で定期的に清掃活動を行っています。

 

結局本日この地点での流量は96.60㎡/sでした。1秒間に96トンの流れです。

ちなみに今年度の最高流量は、8月10日午前7時観測、台風11号接近時の8500㎡/s。1秒間に8500トンですから、ものすごい流れであったことが分かりますね。

みなさんも洪水時の川には決して近づかないよう、ご注意よろしくお願いします。

さて、本日の第2計測現場は仁淀川大橋のたもと。

このラインの断面を流れる流量を測ります。

ここでも右岸、左岸ともに警備を2名配置。他船舶の往来等を監視します。

ワイヤーを引っ張りボートを移動する先頭・上野。

後ろの藤岡は船酔いではなく計器を確認中。

 

この場所は右岸側の川底が深いので、スタッフを長くとる必要があります。

スタッフを長く伸ばして

流れを考慮して前方に投入。

ライン上で直角になるように操り測定。

岸からすぐなのに水深5m近くありました。

続いて流速を測定。繰り返しますが船酔いではありません。

測定後に川漁師さんが出漁されていました。

 

仁淀川本川2地点とも、8月初旬の台風による大雨増水の影響から回復し、本来の仁淀ブルーを取り戻してきていました。

さすが水質日本一!(国土交通省全国1級河川水質ランキング2010年、12年、13年)

 

流量観測業務は仁淀川本川2カ所、支川2カ所、用水路2カ所を通年を通して観測しています。

午後から向かったのは、仁淀川大橋のすぐ近くを流れる波介川。

波介川・小野橋のたもとが測定地点。

流れの遅い(流速0.2m/s以下)この地点では、プロペラのついた回転式流速計で測定を行います。

ちなみに、さきほど本線で使っていたのは電磁式流速計です。

インターンの篠原君(手前)に測定を体験してもらいました。

 

回転式流速計の場合、結果が計器に表示される電磁式と違って、測定時間内の回転数をカウントして測ります。

横のスタッフはストップウォッチを持ち、カウントを行う役割を担います。

全体図はこんな感じ、こちらでも両岸に警備を付け安全対策には万全を期します。

インターンシップで来てくれた愛媛大学農学研究科 森林管理特別コース修士2年の篠原君(左)と、高知工科大学3年、建築都市デザイン専攻の小笠君。

「簡単だと思っていたのですが、正確な測定を行うまで何度もダメ出しされて大変でした。今日は割と穏やかな流れでしたが、早い時はさぞ腕がつらいだろうなと思います。貴重な体験ができたので、将来にいかしていきたいです。ありがとうございました」。

 

土木分野の技術者として将来を担うことが期待されるお2人、いい経験になったでしょうか? 勉学などこれからも頑張ってください。

 

さて、いかがでしたでしょうか。

本日の低水流観業務ほぼ毎週のこの地道な作業が、仁淀川下流部の流量の基礎データとなり、川の治水計画等に役立てられています。

特に、大雨で増水した時や、日照りの渇水時には、上流部にある大渡ダムの放流調整の基礎データとなり、川の氾濫や農業用水の不足等を防ぐ役割を担っています。

 

相愛が仁淀川流域の流量観測に携わって20年超。

今年度も、低水、高水含めて正確に安全に業務を遂行してまいります。

 

水青き清流・仁淀川で会いましょう!

川でお見かけの際には、ご協力&ご声援よろしくお願いします。