0232 スロー地震観測点の設置を実施しました
東京大学地震研究所様からのご依頼を受け、高知県内でスロー地震観測点の設置を実施しました。本記事では、設置業務の概要をご説明します。
■スロー地震とは?
通常の地震(ファスト地震)は、断層の急激なすべりにより地震波が発生します。一方、スロー地震は断層がゆっくりとすべり、通常の地震よりはるかに遅い速度で発生します。
スロー地震は人間には感じられないものの、数ヶ月おきに高頻度で群発することが特徴です。この現象は海溝型巨大地震との関連性が注目され、研究が進められています。
しかし、スロー地震はあまりにもゆっくりと進行するため観察が難しく、今世紀になるまで見逃されていました。巨大地震との関係については未解明な部分も多いですが、スロー地震から通常の地震までを幅広く捉え、地震現象を深く理解するために「Slow-to-Fast地震学」という新たな研究領域が展開されています。
■スロー地震観測点設置の目的は?
東京大学地震研究所様では主に西南日本において広帯域地震観測を行い、多くのスロー地震を検出されています。しかし、四国東部では広帯域地震計*1の設置数が少なく、十分な解析が進んでおらず、今回のご依頼に至りました。
*1 広帯域地震計は周期2分程度までのゆっくりとした地震動を捉えることができる地震計で、スロー地震の中でも超低周波地震と呼ばれるマグニチュード3程度の中規模の地震を捉えるために設置される
■設置業務の概要
スロー地震観測点設置業務の流れをご説明します。
◎業務内容の打合せ
まずは、オンラインにて打合せを行いました。業務の全体像の確認、設置候補地、日程、注意点などの確認を行いました。
◎設置候補地の現地視察
複数の候補地がありましたが、机上で優先度を決め、設置候補地の視察を行いました。
視察時は、
・日照性:太陽光発電が可能か?
・工事車両アクセス:車で接近可能か?
・スペース:2m x 4m程度の平坦な土地を確保できるか?
・往来状況:車や人の往来が少ないかどうか?
・地盤:切土か?
・植生:太陽光を妨げる木がないか?
・通信:docomoの4G電波が安定して届くか?
などの確認を行いました。
また、簡易貫入試験を行い、地盤強度を確認しました。
結果的に、高知県大豊町内の2箇所に設置することしました。
↓候補地の1つ
◎関係各所との合意
関係各所には、候補地視察前にもご説明をしていましたが、正式に土地をお借りしたい旨等お伝えし、協定を結びました。
◎掘削および太陽光パネル設置
東京大学地震研究所の方が高知に来られる前に、掘削や太陽光パネル設置作業を行いました。
↓バックホーを用いて地震計観測点設置場所の掘削を行いました。
↓掘削完了です。
↓掘削の他、太陽光パネル設置や掘削箇所の雨対策を行い、この日の現場作業を終えました。
◎地震観測点設置と埋戻し
掘削の数日後に、東京大学地震研究所の方が高知県に来られ、一緒に地震観測点設置と埋戻し作業を行いました。
↓地震計設置状況です。約1m掘削後、底面にコンクリート板を設置し、その上に地震計を設置しています。
↓設置完了状況です。地震計が捉えた観測データを、NTTドコモの4G回線でクラウドに送信しています。これらの電源は太陽光パネルで賄っています。
■まとめ
地質、土木、電気、通信等の知識を基に、スロー地震観測点設置業務を遂行することができました。また、スロー地震について理解を深める貴重な機会となりました。本設置業務が、スロー地震の解明や防災・減災の一助となれば嬉しい限りです。
ご協力頂いた関係各所の皆さま、ありがとうございました。
(記:事業部 防災地質課 須佐美俊和)