0224 日本地すべり学会で発表

2024.10.08

カテゴリー: 活動報告, NEWS
(公社)日本地すべり学会(宮城大会)で口頭発表を行いました。
第63回研究発表会及び現地見学会2日目の対策・施設維持管理分野に関するセッションにて防災地質課の市橋が発表を行いました。
なお、同じセッションでは5編に対し集水性に関する発表が3編あったことから、同分野においても集水井の維持管理に対する技術的関心の高さを示していると考えます。


▼取組概要
現在、全国に1万基以上ある集水井は地すべり変動や経年劣化による損傷変形や変質腐食が進行していますが、内部点検のうち形状測定については熟練技術者が入坑して事故リスクを伴いながら目視による点検を行われており、明らかに井筒形状に変形が認められるような集水性においては安全面、次に精度や効率、費用について改善が可能と考えました。
そこで今回、UAVレーザースキャナを天蓋上に配置して規則的に移動させて計測し、取得した点群データから井筒形状の3次元モデル化に取組みました。
計測手法と計測結果については以下の通りです。


また技術的優位性を以下の様に考えます。
① 井筒全体の変形区間や傾斜度を3次元図化でき、従来手法のスケッチや展開画像による2次元図化と比べて、井筒変形形状が視覚的に理解し易い。
② 井筒形状3Dモデル化によって、地すべり移動体の変形モードと方向の見える化が可能となる。
③ 現場作業に熟練技術者を必要とせず、少人数かつ軽量機材で短時間に効率的に行えて生産性向上が図れ、人が入坑せず地表から安全に測定することで墜落・酸欠事故リスクを回避できる。


従来技術との比較


【形式】
本取組み(UAVレーザー):点群データ、詳細かつ3次元モデルと任意方向断面が可能
従来手法(人が入坑):簡易計測、概略かつ2次元展開図と限定方向断面のみ


【精度】
本取組み(UAVレーザー):mm単位、深度方向に一定
従来手法(人が入坑):1~10㎝単位、深度に伴い低下


【作業性】
現場作業時間の短縮が図れ、重量物である天蓋を取り外さなくてよいことから、人しか辿り着けないような急斜面上や狭隘箇所の集水井も、安全確保した上で最少人数での点検が行える。


【安全性】
入坑して測定する熟練技術者や技能者と資機材を必要としないことから、作業計画上の制約がなく事故リスクも回避できる。


最後に、新技術活用によって生産性と安全性の向上が実現できれば、地すべり対策施設維持管理DX推進が図れ、地域の安全安心と活性化に資する取組みとなります。
本手法は、四国の地すべり地では初めての取組みであり、全国的にもレーザースキャナでの計測で上手く3D表現できた事例は昨年度まで報告されておらず、モデルケースに位置付けられると期待しています。


今回の取組にあたりご理解ご協力頂きました国土交通省四国山地砂防事務所の皆様には心より感謝申し上げます。