0064 土質試験室のお仕事パート2
今回の相愛お仕事紹介ブログは「土質試験室のお仕事パート2」。
最近相愛ホームページに出会った方には、パート2と言われても違和感があるかと思われますが、パート1は2013年の8月にご紹介しておりますね~。
ぜひ復習のためにも、前回の記事もご参照ください。
前回のブログから。「土の物理試験」「三軸圧縮試験」などをご紹介しました。
さて、前回も冒頭に触れましたが、高知県内に地質調査業者は数あれど、土質試験室を持っている会社はそう多くはありません。
パート2では、弊社・相愛が誇る土質試験室の業務を前回ご紹介していなかった一軸圧縮試験」を中心にご紹介させていただきます。
4年前とかわらぬ牧歌的な佇まいの弊社・土質試験室。
今回ご紹介する試験は、ひとつがアスファルトの道路を新たに設置する際に必要な、土の強度を調べるCBR試験と、地震などで液状化が懸念される河川堤防を強化するために、どれくらいのセメントを混ぜて土壌改良を行ったらよいかを調査するセメント安定処理の配合試験。
まずは、CBR試験の方からご紹介。
CBR試験は、設置するアスファルトの構成や必要な厚さを把握するために行う試験で、現場から採取した土の強度を調べます。
今回、アスファルト道路設置のためにすでに6ヶ所の土を採取してCBR試験を行っていましたが、その内2箇所から周りの数値と異なる値がでたため、さらに近くの土を採取して念押しで確認を行うために追加試験を行いました。
図で表すとこういう感じ。
真ん中の2箇所が、それぞれ右端、左端の数値と異なり、より強く出たり、より弱く出たりしたため、その付近の土で再試験を行います。
道路を支える基盤になる層の土(路床面から50cm以上深い地点)を採取します。
採取して試験室に持ち込まれた土。1箇所から2袋ずつ掘りとります。
測定する強度は、実際にアスファルトが敷かれた時にどうなるか、を把握するためのものなので、アスファルトが上に敷かれた状態の土を再現する必要があります。そのために行われるのが、まず土の締固め。
これは、実際にアスファルトを敷くときにロードローラーなどで、土を締固めることを再現するために行います。
締固め作業準備。採取した土を試験用のモールドに詰め替えます。
モールドに半分の土を入れて1層目を作って締固め、モールドの上端まで土を入れて2層目の締固め、かさましした容器の上端まで土を入れて3層目の締固め、の3回の締固めを行います。
全自動突固め試験機による締固め。5kgの重りを67回自然落下させます。
3層それぞれ同じ工程で締固めていきます。
全自動なのですが、粘性が強い場合は手で介助してあげます。
餅つき機でいうと、杵にもちがくっついて上がらなくなる状態が生じるので、人力で介助してあげないといけません。
硬い礫などの入り具合によって計測値が変わるので、同じ箇所の土を3つのモールドに分けて試験を行い、平均値を出します。
今回は2地点の試験なので、合計6つのモールドになりました。
浸水させます。これは、降雨が続き土がぬかるんだ状態を再現するためのもの。
ヒタヒタに浸して4日間。最悪のコンディションを作り出してからCBR試験を行います。
完全に水に浸りました。上に取り付けた計測ゲージで、任意の時間ごとに土の膨張具合を計測し続けます。
同じ地点で採取した土で、別途含水比を測る試験も行います。
水分を飛ばす装置に入れ、乾燥させます。
ここまでのところで、分かったことは何ですか?
相愛・入社2年目の試験室スタッフ、期待のやや新人・押谷君に聞きました。
「この土は粘性が強いですね。水はけが悪い土です。有機質分も多いですね。粘性の土は土の粒が小さく、キメが細かいのが特徴です」。
聞けば、そもそも田んぼだったところの土だとか。
田んぼは保水力が必要。作物なので当然有機質分も多くなります。
なるほど、入社2年目とはいえ、ほとんどの試験に関わっているため経験値も豊富で的確なコメントが帰ってきました。
さて4日後、試験室を再訪問。
あれ2つない!?
試験が始まっていました。後ろは土質試験室管理責任者の竹内スタッフ。2人で手分けしてさまざまな試験を行っています。
こちらがCBR試験を行う、一軸圧縮試験機。
CBR試験では、直径5cmプラスマイナス0.12mm×長さ20cmの鋼材を1分間に1mmのスピードで貫入し、貫入した幅を計測していきます。
細かく言うと、台がそのスピードで上がって行きますので、何mm、何cm上がった地点で土の貫入幅は何mm、何cmあるか、を記録計測していきます。
ここでも、実際の舗装路面を想定して、アスファルトの重さ分の重り5kgを装着。
次のモールドを台に乗せ、ゲージの数値を0に合わせて…。
計測スタート! 最初は台が0.5mm上がる度に記録していくので、目が離せません。
計測ポイントが近づくと、目線をゲージの高さと水平にして構え、シュタッと確認。集中力のいる作業です。
押谷
「先輩社員から、ゲージは目線の高さで読めと指導を受けました。僕は背が低いので、伸び上がってます…」。
台が12.5mm上がったところで、試験終了。
こんな感じで鋼材が貫入していきました(白いのはろ紙です)。
モールドを乗っけて重さを計測。4日間の含水前にも計測しており、そのデータを比較してその土の含水量を把握します。
ジャッキアップしてモールドから土を取り出します。
抜いた土をトレイに分け、乾燥機で水分を飛ばし含水比を計測します。
水につける前にも同じ計測を行っており、それぞれの含水比を比較して土の性状を確認します。
さて、押谷君。ここまでで分かったことは?
「そうですね。最初に周りの強度が低いのに、強度が高く出た地点を試験しました。ここまでの数値を見る限り、強度は高いとまではいかないですね。
最初に採取した土に礫などが多く含まれていたのか、イレギュラーな状態の土だった可能性がありますね。
次に試験したのは、逆に周りの強度が高いのに、強度が低く出た地点です。
こちらも同様に、強度はそれほど低くなく、最初の土がイレギュラーだった可能性が高いですね。
最終的には、計測したゲージの数値に更生係数をかけ、荷重の強さ(kn/m2)を算出し、標準的な荷重の強さに比べて試験した土がどのくらいの値になるか=CBR値(路床土支持力比)を出します。
押谷解説
「すべてのCBR試験を終え数値を計算したところ、どちらの場合も、最初に試験した土がイレギュラーなものでしたので、新たに計測した土の強度と周りの土の強度に合わせて、舗装面の厚さを決定していくとこになりますね」。
続いての試験は、地震などで液状化が懸念される河川防を強化するために、どれくらいのセメントを混ぜて土壌改良を行ったらよいかを調査するためのセメント安定処理の配合試験です。
土壌採取の様子。
このあたりの堤防は、調査の結果地震が起きた時に液状化が懸念されるポイントがありました。この弱い箇所の土にセメントを混ぜ、強度を高める土壌改良工事が行われる予定です。
持ち込まれた土の様子。砂礫混じりの粘性土です。
土壌改良のために施されるセメントを試験のために作成。
土と混ぜて行きます。
どれくらいの割合で土とセメントを混ぜるのがベストか、この現場での目標強度は、調査の結果1立法メートルあたり1260knと出ていますので、この強度を達成するために必要なセメントの量を算出するために試験を行います。
そのため、現場の土1立法メートルに対して、セメントを100kg、200kg、300kgを混ぜた場合を想定して試験を行い、適切な値をはじき出していきます。
実際の現場ではセメント100kgに対する土の割合は1・8トン程になりますが、試験につかうモールドは10cm×5cmのサイズ。
上記の配合量をこのサイズで計算し直し、小さなサンプルを作って試験を行います。
この状態で必要日数寢かせます。
試験は7日間寝かせた状態と28日間寝かせた状態のもので行います。
取材当日は28日目。7日間寝かせたもので行った試験結果の確認のため、一軸圧縮にかけ、強度の計測を行います。つぶさに見ていきましょう。
まずは試料をモールドから取り出します。中には、くっついて取れにくものもありますので、木槌で周りを柔らかくノックし、慎重に取り出します。根気のいる作業です。
きれいに取れました。上からセメントを100kg、200kg、300kg混ぜた場合を想定して作った試料。
体積を測定するため、幅と高さを0.1mmの尺度まで3箇所ずつ計測。
重さもチェックします。
セメント安定処理の配合試験は、貫入ではなく、試料全体に一方向から荷重をかけてその強度を測ります。
一軸圧縮試験機。CBR試験と台の上の装置が違っているのわかりますか?
この台の上に試料を乗せ、下から台を押し上げていき、どれくらいの荷重で壊れるか(どれくらいまでの荷重まで耐えられるか)を測定していきます。
押し上げるスピードはCBR試験と同じく1分間1mmとなります。
まず試料を加圧板にピッタリひっつける必要があります。
繊細な作業です。
いろんな角度から凝視し、隙間がないかチェックします。
試験スタート! 台の上がり具合を記す左下のゲージが任意の数値を示すたびに上の荷重を読むゲージを確認し、シートに記していきます。
下のゲージを確認し、シュタッと上のゲージを確認し、サクッと記入。
CBR試験より、チェックのスパンが短く、大忙し。気が抜けません。
そうこうしているうちに上のゲージの動きがにぶくなってくると…。
崩壊。この時の数値が荷重のピーク値となります。
セメント200kg見当の試料は強度が高いので、崩壊の衝撃が大きく出ます。
少し飛び散る場合もあるのだとか。
さらに強度の高いセメント300kg見当の試料。パックリ割れました。
試験終了で、確認のための撮影。
割れました。
押谷君、ここまでのところで分かったことは?
「そうですね。28日目の試験は、7日目の結果の確認のために行っています。
日数をおいた分乾燥が進み、強度が高くなっているので、当然崩壊は7日の結果よりも高い荷重で起きます。今日の数値も7日目の1.3~1.5倍くらいの数値が出ているので、7日の試験で問題のない計測ができている事がわかったと言えると思います。
試験の結果から、この堤防では一立法メートルあたりセメント200kgを混ぜる改良工事が適切だと考えられますね」。
実際のこの堤防で改良が必要な幅は20m程度とのこと、直径1mのドリルを地下6mまで貫入し、セメントミルクを土に注入して混ぜ込んでいく改良工事が行われる予定になっています。
それでは、これからの相愛・土質試験室を担う期待のちょっと新人押谷君に話を聞いてみましょう。
―入社2年目にして、さまざまな試験に立ち会っていると思いますが、 感想はいかがですか?
押谷:正直なところ、とても大変です。経験がまだまだ追いついていない中でも、仕事は待ってくれませんので…。ですが、先輩スタッフのサポートもある中、非常に充実していると同時に、またとないチャンスを得ていると感じています。
多様な試験依頼が持ち込まれる中で経験を積み重ね、少しずつではありますが着実に前に進めているという実感を得られています。
土質試験室は、地質調査の縁の下の力持ち。地道な作業が続きます。
―仕事の中でどんなところが面白いですか? 発見はありますか?
押谷:土の特性を掴み試験結果を予測して試験を行い、それに沿う形で結果が得られた時にとても面白く思います。
また、試験の効率を上げることができた時にも充実感を感じます。
試験時間自体は短縮できませんが、その前準備や片付けなどの動作で自分の思った通りに時間を短縮できるようチャレンジしています。
あとは、実際に土質試験を行う中で技術書に記載された内容と同じ結果を机上の論理だけでなく、生きた経験として体感し理解に繋げることが出来ることが発見といえるのかなと思っています。
―今後、試験室としてトライしていきたいことはありますか?
押谷:土質試験は、求める結果の違いに応じて試験条件が変化してきます。
その試験条件の選定は明確に基準が定められたものとそうでないものがあります。
特に明確な基準のない場合は、試験者の経験則をもとに試験条件を選定しなければならない場合も出てきます。この時の試験条件の変更によって大きく手間を取られるとこもあり、その曖昧な判定基準を、再現性を持って個人の差がなく判断できるような方法を見つけ出したいと考えています。
「土と対話し、土の心の声を聞く」押谷君。
―相愛・土質試験室のPRをしてください。
押谷:相愛の土質試験室は、自然に囲まれた中で鳥のさえずりや虫の音を聞きながら
落ち着いた空間で土質試験を実施できるため、気持ち的に余裕を持つことができ、一つの作業に集中して取り組むことを後押ししている空間であると考えています。
試験機材に関しても多くの種類を揃えており、四国内でも数える程しかない三軸圧縮試験機を持っていることも、多様な試験に対応できるという意味で非常に魅力ある試験室ではないかと考えます。
また、調査から土質試験まで、相愛でトータルに請け負うことができるので、時間のロスや小さな行き違いを少なくでき、尚且つ調査全体を通しての手厚いサポートを行える点が強みであると考えています。
実際、サンプルの土壌を採取する際にも、自分が調査の内容を把握した上で行っています。
試験に適した場所の土を的確に採取することで、適切な結果が導き出せている場合も多いと感じています。
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いかがでしたか、土質試験室のお仕事パート2。
押谷君も語ってくれましたが、地質調査から土質試験まで、トータルに業務を行うことで、それぞれの調査現場の土、地中の様子が全体的に把握でき、きめ細かな対応ができることが、弊社・相愛の強みのひとつと言えると思います。
もちろん、試験のみの業務も鋭意遂行しておりますので、皆さまぜひ、お気軽に弊社・土質試験室までご相談ください。
「相愛・土質試験室よろしくお願いしま~す」。
右は新人・押谷を支える先輩スタッフ竹内。